スパイラルの1993年版『Technodrome』を聴き込んでいた人には、全く違う音楽に聴こえるVariant(変異体)
2022年10月1日に発売された新アルバム『Technodrome Variant [New Mix in 2021]』は、1993年『Technodrome』のMIDIデータと音源データをもとに、2021年の音源環境下で新たに再構築した、新ミックス版である。
演奏情報(MIDI)と、ベースソロのオーディオソースは1993年版と同じはずなのに、音楽風景がガラッと変わったような印象がある。筆者の感覚では、誤解を恐れずに端的な言い方をすれば、1993年版は「内省的なカプセル空間」、2022年版は「覚醒した多次元空間」というような差異があるように思う。今回、1993年版を久々に聴き直してみたのだが、緻密に設計されたバランスがあり、やはり素晴らしかった。そして、2022年版は「示唆しているもの」が違うかのように音像が変異しており、聴き比べるほどにその違いを感じ取ることができる。実は、全曲、尺も変わっている。ヘッドフォンで聴くのも、もちろん良いのだが、なるべく良いオーディオ環境で、許される限りの大音量で、この音楽を体感していただきたい。
ちなみに、1993年版(そのリマスターの2000年版も同様)でアルバムのラストに収められていた、アルバム内唯一の室内楽録音“Lattice”は、今回の2022年版では割愛されている。
濱瀬氏のインプロヴィゼーションをじっくり聴き込みたい人に
1993年版『Technodrome』では、明確な表現意図による抑制的な音量でベースのインプロヴィゼーションが発現されていたが、今回の2022年版アルバム『Technodrome Variant [New Mix in 2021]』では、くっきりとした音像で、当時の4弦フレットレスベースのソロを余すところなく聴くことができる。濱瀬氏のインプロヴィゼーションをじっくり聴き込みたい人にとっては、重要な音源資料となる筈である。
~「『Technodrome Variant』について/濱瀬元彦」より抜粋~ 『Technodrome variant』では、すべてのトラックの再構成を行っている。まず、ベースソロは1993年当時の私の目的意識で音量を過度に下げていたので、適正なボリュームに上げ、今日ではいささか古すぎると思われるパーカッションの音を差し替え、シンセサイザーの音はMIDIデータを活かして新しく録音し直すなど、全面的な改良を行った。(2022. 8. 20) 〈アルバム情報はこちらから〉 https://lung-inc.com/artist/TDV2022_10_01/index.html
さて、2018『REMINISCENCE』〈新レコーディング〉、2018『INTAGLIO』〈新レコーディング〉の存在を知っている人であれば、濱瀬氏の最新のインプロヴィゼーションを、今回のTechnodromeでも聴きたいという方が多いと思われる。
そこで、朗報がある。まさにそれを、生で聴くことができる機会がある。
2022年版『Technodrome Variant』のレコ発LIVE開催が決定した。
(続きは下記)
2023年2月7日(火曜日)
濱瀬元彦『Technodrome Variant』リリース記念LIVE at JZ Brat